公開日:2025年2月13日
最終更新日:2025年2月13日
産前
妊娠悪阻とは?つわりとの違いや受診の目安

妊娠悪阻という言葉をご存じですか。妊娠悪阻とは、妊娠初期に起こるつわりの中でも特に重い状態を指します。むかつき(嘔気)や嘔吐などにより水分や食事を取るのが難しくなることがありますが、多くの場合、適切に治療を受ければ改善します。
この記事では、妊娠悪阻の特徴やつわりとの違い、受診の目安、そして日常生活を楽にするための方法をわかりやすく解説します。妊娠初期の体調変化を少しでも穏やかに乗り越えるために、ぜひ参考にしてください。
目次
妊娠悪阻とは

妊娠悪阻とは、つわりの中でも特に重度の症状を指します。つわりとは、妊娠初期に多く見られる吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状のことをいいますが、妊娠悪阻ではその症状が日常生活に支障をきたすほど強くなり、体重が大幅に減少したり、脱水症状を起こしたりします。
妊娠悪阻と診断された場合は、外来(通院)または入院で点滴などの治療をします。
妊娠悪阻になると赤ちゃんに影響する?
体調が悪くて何も食べられないために、赤ちゃんへの影響を心配している方も多いのではないでしょうか。
つわりが赤ちゃんに与える影響は、一般的にはそれほど多くないとされています。つわりで一時的に食事や水分を摂取できない状態が続いても、赤ちゃんはお母さんの体に蓄えられた栄養を優先的に利用して成長するためです。
ただし、脱水症状が見られる場合や、体重が減って「ケトーシス」と呼ばれる状態になった場合には、お母さんの体を守るために治療を行う必要があります。ケトーシスとは、血中に「ケトン体」が増加した状態のことをいいますが、尿検査でわかります。ケトン体の増加は、このような時に見られます。
妊娠悪阻で受診するかどうかの目安
妊娠悪阻が疑われる場合には、速やかに受診しましょう。厚生労働省は、以下の症状がある場合には入院加療が必要としています。
- 1週間に3〜4kgの体重減少がある
- 頭がぼーっとする
- 尿中ケトン体が(+2)以上を示す
- 肝機能障害(GOT、GPTが100IU/ℓ以上を示す場合)
家庭でこのような判断をするのは難しいので、以下のような症状がある場合は速やかに受診しましょう。
- 体重が減少している場合
- 食事や水分をほとんど摂取できず、濃縮した尿が少ししか出ない場合(脱水症状が見られる場合)
- 力が入らず歩けない場合
妊娠悪阻の治療内容
妊娠悪阻と診断された場合には、以下のような治療が行われます。
- 点滴治療:水分補給、必要な栄養素の補給
- 薬物治療:吐き気どめ、胃腸薬
軽度の場合は通院での治療になりますが、重度の場合は入院が必要です。たとえば、吐き気や嘔吐によって水分や食事が全く摂れない状態のときや、体重減少が著しいときには、入院治療になります。
また、妊娠悪阻になると精神的負担も大きくなるため、必要に応じてカウンセリングが行われることもあります。
妊娠悪阻は、適切な治療を行えば改善することも多いです。「つわりは病気ではないから」と一人で耐えずに、早めに受診して必要なサポートを受けましょう。
妊娠悪阻に関するQ&A
妊娠悪阻について、よくある質問とその回答をまとめました。不安がある方や、妊娠悪阻が気になっている方は、参考にしてみてください。
Q:妊娠悪阻はいつまで続きますか。
妊娠悪阻の症状は、通常、妊娠15〜16週頃までには改善することが多いです。個人差が大きく、妊娠中期まで症状が続くケースもありますが、ほとんどの場合は妊娠初期にみられます。
Q:妊娠悪阻の原因は何ですか。
つわりや妊娠悪阻の原因は、完全には解明されていませんが、ホルモンの影響や、体の防御反応などが要因になっていると考えられています。つわりの原因については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
Q:吐き気や嘔吐で食事が摂れないのですが、どうしたらいいですか。
嘔吐がひどく、食べても吐いてしまう場合は、無理に食べようとせず、食べられるものを食べられるときに少しずつ摂るようにしましょう。ただし、いくら食欲がなくても水分補給は必要です。水分も全く摂れない場合には、医療機関を受診しましょう。
Q:妊娠悪阻で入院する場合、どのくらいの期間になりますか。
入院期間は症状の重さや回復状況によって個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。
<入院期間>
- 軽症から中等症の場合:数日から1〜2週間程度
- 重症の場合:2〜4週間程度
<退院許可の判断基準>
- 脱水症状や血液検査の結果が正常値になっている
- 水が飲める/食べられる状態になっている
- 体重が増加傾向にある
Q:2回目の妊娠でも妊娠悪阻になることはありますか。
つわりや妊娠悪阻の症状は、妊娠の回数とは関連がないと考えられています。
毎回つわりの症状が現れる人もいれば、1回目のときに症状が見られなくても、2回目でつわりを発症する人もいます。
まとめ
この記事では、妊娠悪阻について解説しました。
- 妊娠悪阻とは
- 妊娠悪阻になると赤ちゃんに影響する?
- 妊娠悪阻で受診するかどうかの目安
- 妊娠悪阻の治療内容
- 妊娠悪阻に関するQ&A
妊娠悪阻の症状は、早めに対処することで最小限に抑えることができます。妊娠悪阻が疑われる場合は、我慢せず早めに医療機関を受診しましょう。
監修者

北出 真理
順天堂大学医科学部 教授・医学博士
思春期から妊娠適齢期の女性の妊娠、妊孕性に関わる問題を、基礎研究・臨床研究を通じて解決することに取り組む。現在は、女性の妊娠にとって重要な子宮内膜症、早発閉経、着床不全、不育症といった分野で研究を行う。また女性スポーツ研究センターでは女性アスリートのコンディショニングを医学、栄養学の面からサポートするための診療、研究にも従事。

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