公開日:2024年12月7日
最終更新日:2024年12月7日
産前
つわりとは|症状と原因、つらさを和らげる方法
つわりは、妊娠初期に見られる症状で、多くの妊婦さんが経験します。吐き気や嘔吐、食欲不振などが続き、、個人差は大きいですが、軽く済む人もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらい人もいます。
この時期は無理をせず、自分を大切にすることが何より大切です。
この記事では、つわりの原因や症状の特徴、重症化のリスクについて詳しく解説するとともに、少しでも楽に過ごすための工夫や、仕事を続けるうえでの職場の配慮についてもお伝えします。
妊娠中の大切な体と心を守るために、ぜひ参考にしてください。
目次
つわりとは
つわりは妊娠初期に見られる症状で、主に以下のような特徴があります。
- 吐き気や嘔吐
- 食欲不振
- においに敏感になる(特定のにおいで気分が悪くなる)
- 味覚が変化する(好きだったものが食べられない/今まで食べまなかったものが食べたくなる)
- 倦怠感、眠気、頭痛
これらの症状は個人差が大きく、軽く済む方もいれば、「つらくて起き上がれない」「日常生活が困難」という方もいます。
つわりは病気ではないため、「我慢するしかない」「みんな経験すること」と軽視されがちですが、数ヶ月続くつらさを我慢で乗り切るのは簡単ではありません。
つわりの期間は、周囲の適切な理解とサポートが欠かせません。この後、つわりの原因や対処法、そして周囲の配慮について詳しく解説します。
つわりの原因
つわりの原因は、完全には解明されていません。しかし、以下の要因が関与していると考えられています。
ホルモンの影響
妊娠初期には、以下のホルモンが急激に増加します。それが、つわりに影響を与えている可能性がありますが、ほかにもさまざまな要因が複合的に関係していると考えられます。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
妊娠検査薬で検出される主な成分です。妊娠すると産生され始めるホルモンで、10週目くらいまで増加していき、そこから減少していきます。妊娠初期に妊娠の維持に重要な役割を果たしています。
つわりは、このホルモンが嘔吐中枢を刺激するために起こるという考え方があります。
エストロゲン・プロゲステロン
妊娠の準備と維持に必要なホルモンで、生理とも大きな関わりがあります。これらのホルモンは、妊娠期間中に分泌量が大きく変化することがわかっており、特にエストロゲンが増えることで吐き気を誘引していると考えられています。
体の防御反応
妊娠中の体は、外敵を避ける反応をすると考えられています。においに敏感になるのもその一環であり、赤ちゃんに悪影響を及ぼすものを避ける役割があるという考え方があります。
たとえば、この時期にお肉を体が受け付けなくなるのは、昔、お肉には菌が多く付いていたため、その害から赤ちゃんを守るためにつわりで遠ざけているというのが、この説の考え方です。
つわりはいつからいつまで続く?
一般的には、妊娠5~6週目頃から始まり、8~10週目にピークを迎え、12週頃になると症状が軽減することが多いといわれています。
しかし、つわりの時期には個人差があるため、必ずこのようなスケジュールで進むというものではありません。一般的なつわりは妊娠前期に多いですが、後期に見られる場合もあります。
妊娠悪阻(にんしんおそ)とは
つわりが重症化して、妊娠悪阻と診断されることがあります。厚生労働省では、妊娠悪阻として以下のように発表しています。
- 1週間に3〜4kgの体重減少がある場合
- 尿中ケトン体が(+2)以上を示す場合
- 脳症状や肝機能障害(GOT、GPTが100IU/ℓ以上を示す場合
妊娠悪阻と診断された場合は、入院加療が必要となることがあります。以下のような症状がある場合は妊娠悪阻の可能性があるため、次の健診を待たずに早めに受診しましょう。
- 1週間に3〜4kgの体重減少がある場合
- 食事や水分をほとんど摂取できず、尿が出ない場合(脱水症状が見られる場合)
- 力が入らず歩けない場合
つわりのつらさを和らげる工夫
つわりがつらい時期は、症状緩和を最優先にして、少しでも楽に過ごせる方法を探しましょう。たとえば、以下のような工夫がつらさを軽減する助けになるかもしれません。
食事の工夫
食べられないときの対策
1日3回食事をするのが難しい場合は、無理に食卓につこうとせず「食べられるときに食べられるものを食べる」ようにしましょう。栄養を摂らなければと無理に食べて体調を悪化させるよりも、自分が食べられるものを見つけ、少量ずつ食べる方が良いでしょう。
食べづわりの空腹対策
空腹になると気持ちが悪くなる場合は、すぐに口に入れられるものを用意しておきましょう。体重増加が気になる場合は、食事以外の時間はこんにゃくゼリーなどのカロリーの低いものにすれば安心して食べられます。
調理のにおいが気になるときの対策
調理中のにおいで気持ち悪くなる場合は、無理をせず、電子レンジを活用するなど調理時間を短縮する工夫をしてみましょう。
家族の食事のにおいが気になるときは、別室で食べてもらうなど、家族にも協力してもらいましょう。つわりの時期を乗り切るためには、周囲の理解と協力が大切です。
水分補給の工夫
つわりがつらい時期も、水分補給は大切です。特に嘔吐が続く場合は脱水症状を起こしやすいため、普段以上に水分を摂る必要があります。
しかし、水分を胃に入れることでまた気持ち悪くなることもあるでしょう。糖分の入っていない炭酸水や、経口補水液などを試してみて、飲みやすいものを探してみましょう。氷をなめるだけでも水分補給になります。
どうしても飲めない場合や、脱水症状が見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。
職場でのつわりへの配慮
妊娠中の女性やつわりに苦しむ妊婦さんが仕事を続けられるようにするために、企業側の配慮が不可欠です。以下は、妊婦が働きやすい職場環境を整えるために、厚生労働省が推奨する具体的な対策です。
つわりを抱えながら働くには、周囲のサポートが欠かせません。症状が悪化しないよう、適切な配慮を受けられる環境を整えることが求められます。
勤務時間の調整
体調が悪いときには、適宜休憩を取れるような勤務時間の工夫が求められます。たとえば、いわゆる時短勤務を「2時間早く帰宅する」という形にするのではなく「必要に応じて休憩を取れるようにして、その合計時間が2時間以内になるようにする」といった工夫が効果的な場合もあります。
また、つわりと食事は密接に関わりがあるため、適宜間食を取ることを認めることが望まれます。
作業環境の改善
体に負担がかかる業務を控えるのと同時に、つわりに悪影響を及ぼすにおいがきつい場所や、換気が悪い場所での作業を制限することも必要です。また、喫煙所などが近くにあると受動喫煙の危険性があるため、周囲の協力が必要です。
職場での相談方法
厚生労働省では、妊娠中の働く女性と医師、事業主を結ぶ「母性健康管理指導事項連絡カード」を発行しています。必要事項を医師に記入してもらい、それを事業主に提出することで、時差勤務や休憩時間の延長などの対処を申し出るものです。
職場との話し合いをスムーズに進めるために、ぜひ積極的に活用しましょう。カードは、以下のページでダウンロードできます。
まとめ
この記事では、つわりの症状や原因、つらい時期を過ごす工夫を紹介しました。
- つわりとは
- つわりの原因
- つわりはいつからいつまで続く?
- 妊娠悪阻(にんしんおそ)とは
つわりの時期は、無理をしないことが何より大切です。食べられるときに食べられるものを選び、つらいときは休むことを優先しましょう。また、症状が重い場合は医療機関に相談し、必要なサポートを受けましょう。
監修者
株式会社つくばウエルネスリサーチ 取締役副社長/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターアドバイザー/保健師
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了 博士(スポーツウエルネス学)/ 専門領域はスポーツウエルネス学、保健学、人間環境学、公衆衛生学。
旭化成株式会社での産業保健活動、日本看護協会での健康政策の厚生労働省委託事業推進や保健師現任教育、法政大学での兼任講師等を経て、現職。地方自治体、企業等のSmart Wellness City(健康都市政策)推進のコンサルティング、人材育成、国の調査研究事業等に従事し、国や地方自 治体や大学、企業と連携して健康づくり無関心層を減少させ健康格差を和らげる政策に取り組む。
<出典>厚生労働省ホームページ「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
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