公開日:2024年11月23日

最終更新日:2024年11月23日

産後

乳腺炎や白斑、乳頭裂傷…授乳トラブルへの対処法

母乳育児をしていると、乳腺炎や白斑、乳頭裂傷といったトラブルに悩むことがあるかもしれません。授乳期はさまざまなトラブルが生じやすく、痛みがあることで授乳がつらくなったり、精神的な負担が大きくなったりしやすい時期でもあります。本来は赤ちゃんとの幸せな時間であるはずが、痛みのために苦しい時間となり、気分が憂鬱になってしまうこともあるでしょう。トラブルを完全に取り除くのは難しいかもしれませんが、できるだけリスクを減らし、授乳を楽しみたいところです。

この記事では、そんな授乳期のトラブルを抱えている方や、予防したいと考えている方に向け、少しでも楽に授乳を続けるための対処法を解説します。他のママの体験も交えて紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

乳腺炎の症状と原因、予防法・治療法

乳腺炎とは、乳腺に発生する炎症のことをいいます。乳腺炎は、以下の2種類があります。

・うっ滞性乳腺炎
・化膿性乳腺炎

同じ乳腺炎でも原因や症状が異なるため、異変を感じたときにはどちらのタイプかを正しく判断し、早めに対処することが非常に重要です。乳腺炎は早期にケアを行えば症状が軽く済む場合もありますが、知識が不十分で誤った判断をしたために対処が遅れると、症状が悪化することがあります。

乳腺に違和感を覚えたら、まずはどちらの乳腺炎かを確認してみましょう。

うっ滞性乳腺炎

うっ滞性乳腺炎は、母乳の流れが滞って乳管に溜まることで発症する炎症です。乳管の先にある乳腺葉という部分が炎症を起こし、腫れて硬くなって痛みを生じます。

<うっ滞性乳腺炎の主な症状>

うっ滞性乳腺炎では、以下のような症状が見られることが多いです。

・痛い

・皮膚が赤くなる

・乳房が熱を持つ

・しこりができる

 

乳腺炎と聞くと発熱を伴うイメージがあるかもしれませんが、うっ滞性乳腺炎では発熱がないことも多いです。そのため、「発熱がないから乳腺炎ではない」と判断してしまうと、対処が遅れて症状が悪化する可能性があります。乳房の痛みやしこりがあれば、発熱がなくても乳腺炎を疑って、できるだけ早くケアを始めましょう。

 

<うっ滞性乳腺炎の予防法・治療法>

こども家庭庁では、うっ滞性乳腺炎の対処法として、以下の方法を紹介しています。

 

・母乳の滞りを防ぐために、不快感がとれる程度に軽く搾乳する
・授乳間隔を空けすぎない
・乳房マッサージによって乳管を開通させる

 

ただし、搾乳や乳房マッサージの力加減や頻度の判断が難しいことが多いため、専門家に相談することをおすすめします。自治体の産後健診や医療機関、助産院などで相談しましょう。

 

乳腺炎は繰り返すことも多いため、慢性的な痛みと闘っている方もいるでしょう。授乳がつらいときは我慢せず、専門家のサポートを受けることで痛みも和らぎ、精神的な負担も軽くなるかもしれません。

 

自治体の産後ケア事業で母乳相談ができる施設もありますので、痛みが出たときに緊急で相談できる場所を用意しておくと安心です。

 

<他のママの対処法〜体験談を集めてみました>

うっ滞性乳腺炎に悩まされているママはとても多く、それぞれがいろいろな工夫をしています。他のママがどんな方法で予防しているのか、体験談をまとめて紹介します。

 

「予防のために、赤ちゃんの抱き方を変えて、いろいろな角度から飲ませています」

「口の下側(顎側)の方が吸う力が強いと聞いたので、うっ滞しやすい場所が口の下側になるようにしています」

「乳首を浅くくわえると全体を吸ってもらえないと聞いたので、深くくわえさせるように気をつけています」

「左右均等に飲ませるために、10分くらいで左右を変えています」

「食べ物や湿布については、いろいろな説があるのでどれを信じたら良いのか分かりません」

 

痛みの感じ方や対処法は、それぞれ異なります。他のママたちの工夫を参考に、専門家に相談しながら、自分に合った方法を見つけてみてください。

 

化膿性乳腺炎

化膿性乳腺炎は、傷などから細菌が乳腺に入り込むことによって発症する炎症です。

<化膿性乳腺炎の主な症状>

化膿性乳腺炎では、以下のような症状が見られることが多いです。

 

・強い痛みを感じる
・皮膚が赤くなる
・乳房が熱を持つ
・発熱(高熱になることが多い)
・全身の倦怠感や悪寒を感じる

化膿性乳腺炎には、症状が突然現れるという特徴があります。急な発熱を伴うことも多いため、兆候が見られたら早めに対処しましょう。

 

<化膿性乳腺炎の原因>

化膿性乳腺炎は、細菌が乳腺に感染することで発症します。授乳中にできた乳頭の小さな傷などが細菌の入り口となることが多いです。

 

<化膿性乳腺炎の予防法・治療法>

化膿性乳腺炎を防ぐのは難しいですが、以下の対処によってリスクを軽減できる可能性はあります。

 

・乳房や乳頭を清潔に保つ

・乳頭の傷を早めに見つけ、適切な処置を行う

 

これらのケアは、化膿性乳腺炎だけでなく乳房の健康全般に効果があるため、日常的に心がけることが大切です。

 

また、化膿性乳腺炎が疑われる場合は早めに医師の診察を受け、治療を開始しましょう。抗生物質の投薬や授乳に関する指導が必要となるため、医師の指示に従って対処することが大切です。

 

<他のママの症状・対処法〜体験談を集めてみました>

化膿性乳腺炎は、ある時突然その症状に気付いたという声も多いです。他のママの体験談をまとめて紹介します。

 

「授乳時に激痛が走り、その後寒気が止まらず横になっていたら熱が38度まで上がりました」

「授乳すれば治るかと思っていましたが、1日経っても熱が下がらず、受診したら薬を処方されました」

「母乳パッドに膿のようなものがつきました」

「高熱がなかなか下がらず、3日間続きました」

 

高熱が出た場合は、医療機関を受診して薬で治療をするケースが多いです。授乳中でも服用可能な薬を処方してもらうために、専門医にかかるようにしましょう。

白斑の症状と原因、予防法・治療法

白斑とは、授乳期に乳頭に生じる白い点のようなもののことをいいます。
白斑ができたときに授乳しても良いのか迷うこともあるかもしれませんが、白斑による害はないと考えられています。

白斑の主な症状

白斑の主な症状には、以下のようなものがあります。

・乳頭に白い点が栓のようにできる
・授乳時に乳頭に痛みを感じる

これらは白斑の典型的な症状で、特に、痛みを感じてみてみたら白い点ができていた、ということがよくあります。

白斑ができる原因

白斑は、乳管が詰まって栓のようになっている状態です。母乳の流れが滞るなどの理由で、母乳の出口である乳口が詰まってしまうことが原因です。白斑があると授乳時に痛みを感じるため、十分に授乳できず悪化する場合もあります。

白斑の予防法・対処法

白斑の予防や対処に効果的なのは、赤ちゃんにしっかり飲んでもらい、母乳の流れを良くすることです。全ての乳管からまんべんなく飲んでもらうよう心がけましょう。

また、白斑ができると痛みのため授乳がしにくくなり、母乳が溜まって乳腺炎につながりやすくなります。症状が改善しない場合は、早めに医療機関や助産院などで相談しましょう。

他のママの症状・対処法<体験談を集めてみました>

白斑は、すぐに治ることもあれば、なかなか治らないこともあります。他のママがどういう症状で悩まされているのか、また、どのような対処をしているのかを紹介します。

「授乳を続けていたらだんだん小さくなり、数日で消えました」
「何ヶ月も消えないまま残っているので不安です」
「痛い日もあれば、痛くない日もあります」
「簡単に取れそうに見えるのに、さわっても取れません」
「消えたと思ったのに、またできました」

白斑は痛みを伴うことが多いため、長引くとつらい思いをするものです。根気よく治療を続けましょう。

乳頭裂傷の症状と原因、予防法・治療法

乳頭裂傷とは、乳頭の皮膚が傷ついたり、ひび割れたりすることをいいます。

乳頭裂傷の主な症状

乳頭裂傷の主な症状には以下のようなものがあります。

・乳頭に傷ができる
・授乳時に強い痛みを感じる
・乳頭から出血する

傷があると授乳時に非常に強い痛みが生じるため、異変に気がついたらすぐに対処し、悪化させないようにしましょう。

乳頭裂傷ができる原因

乳頭裂傷の主な原因として以下のようなものがあります。

・授乳時に赤ちゃんが乳首を浅くくわえるためにこすれる
・赤ちゃんの歯が乳首に当たる
・母乳パッドや下着などがこすれる

乳頭裂傷の予防法・対処法

授乳時の乳頭裂傷を完全に防ぐのは難しいですが、以下のような方法でリスクを軽減することは可能です。

・授乳時に赤ちゃんに深くくわえさせる
・傷ができたら保湿する
・授乳時に痛みがある場合は、乳頭保護器を使う

赤ちゃんに乳首を深くくわえさせることは、乳腺炎の予防にも効果的です。また、傷ができた際には保湿をすることで痛みを軽減し、乳頭を保護する効果も期待できます。保湿には赤ちゃんの口に入っても安全なものを使用しましょう。専用のクリームや馬油などがよく使われますが、医療機関や助産院で相談すると安心です。

他のママの症状・対処法<体験談を集めてみました>

乳頭裂傷は、ヒリヒリした痛みが続いてつらいものです。他のママがどういう症状で悩まされているのか、また、どのような対処をしているのかを紹介します。

「傷が治ってもまたできます」
「痛みがつらいので病院で軟膏を処方してもらいました」
「授乳のときに痛いので乳頭保護器を使っています」
「乳頭保護器は赤ちゃんが嫌がるので使っていません」

授乳期間に乳頭裂傷を経験する人は多く、それぞれの方法で手当をしながら授乳を続けています。痛みを抱えての授乳はつらいので、「こんな小さなことで受診してもいいのかな」などと悩まず、早めに受診して負担を軽減すると良いでしょう。

まとめ

この記事は、乳腺炎、白斑、乳頭裂傷の授乳トラブルとその対処法について紹介しました。
授乳期にはさまざまなトラブルが生じることがあります。痛みがあっても授乳は止められないので、つらい思いをしている方も多いでしょう。この記事が、皆さんの症状緩和や精神的な負担の軽減に少しでも役立てば幸いです。

監修者

塚尾 晶子

 

株式会社つくばウエルネスリサーチ 取締役副社長/筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターアドバイザー/保健師

 

筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了 博士(スポーツウエルネス学)/ 専門領域はスポーツウエルネス学、保健学、人間環境学、公衆衛生学。

 

旭化成株式会社での産業保健活動、日本看護協会での健康政策の厚生労働省委託事業推進や保健師現任教育、法政大学での兼任講師等を経て、現職。地方自治体、企業等のSmart Wellness City(健康都市政策)推進のコンサルティング、人材育成、国の調査研究事業等に従事し、国や地方自 治体や大学、企業と連携して健康づくり無関心層を減少させ健康格差を和らげる政策に取り組む。

<出典>

こども家庭庁ホームページ 

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